5月20日水曜日、まだ若くして数々の高評価を得てきたリオハの醸造家、
ベンハミン・ロメオ氏をお迎えしてディナー会が行われました。
自分のワインはすべて自分で抜栓
数々の評論家やワイン雑誌で世界にその名を轟かすほどの高評価を連発し続けてきた、ロメオ氏。彼のワインへのこだわり、そして愛着は他の生産者とは違うものが感じられました。それは「自分で抜栓すること。」
今回6種のワインを各5本、計30本を用意しておりましたが、すべて彼がコルクを抜きました。世界中でも行うそうですが、納得です。コルクは栓をされた瞬間からワインを守る番人。それの様子でどのような状況で保存をされてきたのかわかります。乾燥していれば、コルクは固くなり、温度が高かれば膨張しています。本来ソムリエの仕事ですが、彼の自分のワインを大切にする想いがその光景をみて感じられました。
繊細かつ大胆な白ワイン
MassisマシスとMacizoマシソ、
そして
Que Bonito Cacareaba ケ ボニート カカレアバ
最初の二つは、カタルーニャの固有品種を使用して最上質のワイン造りに挑んだワインです。チャレロ種とガルナチャ・ブランカ種を使用し、より白いお花のような香りが豊かでフレッシュな仕上がりのマシスと樽のヴァニラ香がふくよかさを与えているマシソ。双方とも酸度が高く、背筋が伸びた味わい。サンパウ定番のミクロメニューと前菜でご用意した、車海老とミントの香るスナップエンドウ、そらまめのピューレとも良い相性をみせました。
続くワインはすべてリオハ産。白ワインはケ ボニート カカレアバです。リオハの地元品種のみ使用した、最上級の白ワインと言っても過言ではないワイン。8ヶ月の新樽熟成を経て、ふくよかな香りとリッチなボディそして白ワインとは思えないほどの長い余韻も兼ね備えています。この驚くべき白ワインに合わせた料理は、カサゴのロメスケットソース。カサゴは弾力を生かし、ロメスケットといいます赤ピーマンやナッツから作られるコクのあるソースでワインに負けない力強い一皿に仕上げました。
緻密かつエレガントな赤ワイン
赤ワインは3種類。帽子がトレードマークであるPredicador 2009 プレディカドール、父から譲りうけた畑La vina de Andres Romeo ラ ヴィニャ デ アンドレス ロメオ、最後は彼の名を世界に知らしめたContador コンタドールです。プレディカドールは食事と楽しく飲んでもらう、というコンセプトのもとある程度酸を残し、バランスよく親しみやすい果実味中心で仕上がっており、ベンハミン氏の父親であるアンドレス氏が約40年前に植えたラ ヴィニャ デ アンドレス ロメオは単一畑らしいピュアで丸みを帯びた味わい。最後を飾ったコンタドールは、世界中の評論家の高評価を得て、すでにスペインワイン史上に名を残すと言われているリオハの傑作です。果実味を得るために徹底した低収穫、神経を研ぎ澄ませた発酵、熟成。パーフェクトワインと呼ばれるそのワインは、複雑なアロマと果実味の広がり、長い余韻に会場全体が包まれました。これらの素晴らしい赤ワインと合わせて
カルメの認めた和牛の柔らかなミスジ、そしてコンタドールに負けない肉質の小鳩を日本のさくらんぼを添えてお楽しみいただきました。
ワインの余韻に浸りながらデザート、お茶菓子をお楽しみ頂いている間にベンハミン氏がすべてのテーブルを周り、お土産であるコンタドールの畑のすぐ近くの小石をプレゼント。その表情は普段ワインと向き合う真剣な眼差しではなく、自分のワインを楽しんでくれた方々への満面の笑顔でした。
今回お越しくださいました皆様、ありがとうございました。
またこの度この素晴らしいワインをご用意してくださったグルメミートワールド様、ありがとうございます。世界屈指のワインとサンパウの料理、この上なく楽しいひと時をお過ごし頂けたと思います。
私事ではありますが6月1日より1週間、スペインカスティーリャイレオン州より招かれまして、研修へ行ってまいります。研修の様子はこの場をお借りしまして、皆様にお伝えしたく思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
レストラン サンパウ シェフソムリエ
菊池 貴行